【読書日記】おいしいごはんが食べられますように/高瀬隼子

今回の本

第167回芥川賞受賞作です!

最初は読むつもりはなかったのですが、王様のブランチであらすじを紹介していた際に職場内の表の顔と裏の顔を扱った作品ということを知り、面白そうだったので早速購入しました。

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あらすじ

社外研修の帰り。二谷と押尾はチェーンの居酒屋で飲んでいた。

そこで突然、押尾から打ち明けられた。「芦川さんのこと苦手なんですよね」と。

二谷も共感してみせると「一緒に芦川さんにいじわるしませんか?」と持ちかけられ、二谷は「いいね」と言う。

芦川さんは、社内ではみんなで守ってあげなければいけないと暗黙の了解がなされている女性だ。

本当は今日の社外研修に芦川さんも参加予定だったが、研修の終わりの方に他社の人たちとのディスカッションがセッティングされていると前日に分かり体調不良を理由に欠席したのだった。

他にも偏頭痛で早退することも多く、残業すると翌日以降にも体調不良が続くため定時退社が当たり前。

芦川さんは以前の職場でハラスメントを受けたことがトラウマとなっているため、声の大きい男性が苦手なため取引先への謝罪は対応しなくても良かったり、面倒な仕事やトラブル対応はベテランのパートや他の社員が代わりに行なっている。

このようにみんなで芦川さんのカバーをしている状況だった。

芦川さん自身は、いつも微笑んでいて返事も良く、少しのセクハラも笑顔で許容するいわゆる可愛がられるタイプだった。そのため上司から可愛がられている。

ある日、芦川さんが体調不良で早退した翌日に手作りのお菓子を持ってきて皆んなに配った。

「美味しい」と褒め称えながらみんなで食べる。

それから残業が続く日があったが、芦川さんは定時で帰り手の込んだお菓子を作ってくるようになった。

ある日、このお菓子をめぐってある事件が起きる…

感想

今回は考察も入るのでネタバレ注意です。

色々と『食べること』について読書中に考えさせられました。寝る直前まで(笑)

私は多分、押尾さんタイプ。美味しいものは食べたいけど毎食は時間がなくて無理。美味しいを強要されるのは苦手。

お菓子や料理がわんさか出てくるので、ついつい読んでいる間、お菓子に手が伸び、ちょっと食べ過ぎなくらいお菓子を食べてしまいました。

でもケーキは胸焼けしそうで食べたいとは思わなかったな。作中後半の表現を読むとね…

二谷はいいのかなぁ。その選択で。

いつか爆発してしまいそうな予感がしますが…読んだ後に幸せなエンドだけでなくバッドエンドも考えさせられてしまうのが芥川賞なのか…?『推し、燃ゆ』も私にとってはそうでした。

読んだ後もついついこの本のことを色々考えてしまいます。こんなに長く一冊のことを考えたのは『むらさきのスカートの女』以来かも?

一冊の中に会社でよくいる人がぎゅーっと押し込められている感じがします。

体調不良で早退して、早く帰って寝て良くなったからと手作りのお菓子を持ってくる芦川さん…

私だったらこう思います。「え?手作りできる余裕あったの?」だって会社の人の分を手作りできる材料なんて家に揃っていますか?帰りに買って帰ったんじゃないの?そんな元気があるなら今日は昨日の分もカバーして働けるよね?

…書き出してみると私もけっこう性格悪いかも。読んでいて、芦川さんの仕事ぶりをみているとついついモヤモヤが溜まってしまいました。こういうのって、例えるならストレスという水の入っているペットボトルに小石を投げ込まれていくような感じ。小石によって、ちょっとずつ水かさが増していき、ストレスが溜まっていくような…

こちらがカバーするだけの関係ってモヤモヤが溜まりやすいですよね。「お互い様ですよ」って引っかかりなく言えるような関係性を作っていきたいものです。

ところで結局のところお菓子を捨てていたのは誰だったのでしょうね。

勝手な考察ですが、誰でもあり得そう。

例えばパートの原田さん。パートなのに正社員の仕事を普段からやらされてストレス溜まりそう。表面では芦川さんを持ち上げているけれども分からないですよね。

もしくは作中では名前が出てこないかった他の社員。みんなが連日遅くまで残業し土日返上しているのに芦川さんだけ特別扱い。理解はしていてもやっぱり思っちゃいそう。「お菓子作る暇あるならその分仕事やれよ」って。

あるいは芦川さんの自作自演。実は芦川さん、あえてこういうポジションになるように調整する演技派だったりして。今回の残業続きで自らの立場が危うくなってきたから同情を得るために自演したとか。

うーん。さすが芥川賞。読了後も思考を占領してくる。

またまた勝手な妄想ですが二谷さんは結婚後に浮気しそう。帰ってくるたびに待ち受けている『温かい手の込んだご飯』に耐えられる気がしません。それとも同じ職場にいるから余計に芦川さんの作るご飯がダメだったのかなぁ。芦川さんが専業主婦になればうまくいく?

こう書き出してみると押尾・二谷・芦川の名前にそれぞれの特徴が表されているような気さえしてきます。

高校時代にチアで真面目に人を応援するということについて考えていた『押尾』。人のお尻を持ち上げるイメージ?

1人では真っ直ぐ立てず、ナヨナヨとしている葦(あし)。川のように周りに流される芦川。

押尾とともに芦川をいじめる協定を結びつつもプライベートでは芦川と交際しているという表と裏で二面性のある二谷。

本書には、至る所に小さなハラスメントや同調圧力が散りばめられています。

スパッと解決するようなエンディングではないのですが、今まさにこういったことにモヤモヤを抱えている人には何かの解決の糸口が見えるかもしれません。

読書感想文に用いたい場合は「おいしいごはんが食べられますように」のタイトルが意味するのは何だろうと考えながら読んでみるといいかもしれません!

「おいしい」ってみんなで言い合いながら食べること?しみじみ自分の中で噛み締めて食べること?

この著者の前作も読んでみたいと思いました!

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今回の本の本体表紙と裏表紙

芦川さんが作ったものでしょうか。どれも印象深い食べものです。

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