【読書日記】私が大好きな小説家を殺すまで/斜線堂有紀

今回の本

前回の更新から早くも二月経って、年が変わってしまいました!今年もよろしくお願いします。

さて今回の本は、斜線堂有紀さんの小説です。斜線堂さんの小説はどれも面白く、既刊の本も改めてチェックしているのですが以前にTikTokで話題になったこちらの本も読んでみました!!

あらすじ

本が大好きな小学生の幕居梓。いつも午後五時のチャイムが鳴るまで図書室で本を読んでいる。

しかし、彼女が本を借りることはない。名残惜しそうに本棚に戻す梓を見て、司書さんも読み切れなかったら借りていけば良いと言ってくれるが、梓に帰ってから本を読む時間は無かった。

五時三十分ぴったりに帰ると玄関の前でお母さんが待っている。

そして、「十五分」と告げられる。その間に食卓の上にあるスーパーの袋に入ったいくつかの菓子パンの中から好きなパンを選んで食べ切らなくてはいけない。

そして、五分の休憩を置いて二十分でお風呂に入り、六時半までに着替え、七時までに明日の学校の用意を済ませて和室の押し入れの前に立つ。

お母さんに急かされ、押し入れの襖が開かれると梓はその中に入る。お母さんはランドセルと梓の靴を押し入れに入れて、そのまま襖を閉めるのだ。

午後七時から朝の七時まで暗闇の中に閉じ込められるため、本など読めるわけがない。

梓が小学校に上がる頃からずっとこの習慣は続いており、このルールを破ると酷いお仕置きを受けることになる。

暗闇の中で梓がすることは、図書室で読んできた本の反芻をすることだった。

数ある本の中でも梓が好きだったのは、遥川悠真の小説だった。繰り返し読み、心の本棚の中でも一番目立つ場所に置いている。

こんな梓の生活が一変したのは、遥川悠真の新作小説が出て司書さんが一番に貸してくれたことからだった。

つい借りてしまったのは、学校での休み時間に読もうと思ったからだった。しかし、梓が押し入れに入る直前にランドセルからこぼれ落ちてしまい、お母さんと男の人に小説が見つかってしまった。

少しのまとまった現金を置いてお母さんは家に帰ってこなくなり、梓は大好きな遥川悠真の小説を胸に踏切の前にいた。

飛び込もうと思ったその時、綺麗な男性から「迷惑なんだよね」と声をかけられた。

その男性は遥川悠真だった。自分の小説を持って飛び込まれると迷惑を被るということだった。

遥川悠真に救われた梓は遥川の家に出入りするようになる。大好きな小説家の仕事部屋や小説に埋もれて幸せな時間を過ごしていたが、そんな時間も長くは続かなかった。

遥川悠真がスランプに陥ったのだ・・・・

感想

これまで読んできた斜線堂さんの小説ほど大きなどんでん返しは感じられなかったけれど、なんだか一番印象に残った小説でした。

読み終えた直後に睡眠を少し取ったのですが、夢に出てきました。

遥川が梓にぶっきらぼうながらにも「来たんだ」と迎え入れる夢。

どこで間違ったのか….

一度起こしてしまったミスを二度目もやってしまったこと。これは、それほどまでに疲労が蓄積されていたからなのでしょうか。

あるいは意図的?

才能を失った天才の話は、『ゴールデンタイムの消費期限』にも出てきますね。

てっぺんから突き落とされる時に見える本性が描き出されていて、恐ろしく感じます。

つくづく凡人で良かったと思ったり…

ある意味で本当に自分が一線を越えるキッカケを作ってしまったとき。

果たして正気でいられるのでしょうか。

最初に一線を超えたとき、そこからもう狂っていたのかもしれませんね。

読み応えがあり、没頭して読むことが出来た胸に響く哀しい小説でした。

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