今回の本
私はオリーブの木が好きです。あの銀色がかった緑のシャープな葉が涼しげで、ついついオリーブの木やオリーブの絵柄のものを買いがちです。
そんな私が雑誌でこちらの本の紹介記事を見たら・・・買うしかないでしょう!!
あらすじ
結婚と家族と真実の愛をめぐる6つのお話の短編集です。
【家猫】
夫に先立たれて一人息子のマンションに好物を作って差し入れに度々訪れる母親。
息子は現在、40代で大手メーカーの企画広報課長という地位についており、容姿も良く一度結婚に失敗したがまだまだイケるはずだ。
もしも息子が再婚したら家をリフォームして、二世帯住宅にしてもらい同居した方が良いだろうと考えているが、最近息子がマンションで猫を飼い始めたようだ。
まだ一度もその姿を見ていないが、猫が結婚の邪魔にならないだろうかと心配にもなる。もっとも息子は面倒だから結婚するつもりはないとはっきり言っているが・・・
【ローゼンブルクで恋をして】
父親が突然「終活をはじめる」と言い出した。
4年ほど前に5歳年下の妻を病気で亡くした父は、74歳。子どもは一人っ子の ひろし しかいない。
ひろしは今年30歳になるが、妻も子供もいる。
父はたまに電話をかけてきて、息子の保育園のお迎えなどでふた月に一度くらい顔を見せにくる。もっとも食事などを共にしようとせず、孫の面倒を見たらサッサと帰っていくので、息子が帰ってくるまで居座ることはめったにない。
父が終活をはじめる宣言からしばらくして、そういえば最近電話が来ないと気付いた。
電話をかけてみると折り返しの電話はなかったがメールが届いた。
「いま、お父さん、終活をしている。しばらく帰れません。父」と返答があった。
果たして父は一体なにをしているのだろうか。
感想
『家猫』では、本当に視点が変われば見えてくる事実は全く異なるということを実感しました。
バツイチの息子の母、バツイチの息子、別れた嫁それぞれの目線で語られます。
別れた嫁目線で語られるまでに先入観を植え付けられているので、真実を知った時ゾッとしました。しかもそれを悪かったとは思っていない息子側の人々が恐しいけど、私たちの日常でもありふれていそう…
表題作の『オリーブの実るころ』は、ひょんなことから始まった年代の違うご近所付き合いの話ですが、老人がなぜ庭先にオリーブを植えたのかが分かるラストでは心がじんわりと温かくなりました。
そういえばタイトルの内容と装幀が異なる話のものってあまり見ないかも。
装幀で描かれているのは『ガリップ』の話に出てくる白鳥ですね。
『ガリップ』は読んでいて、なんだかモヤモヤと物悲しい気持ちでいっぱいになりました。
主人公が物分かりが良すぎる!もっと男性も気付いて、察してくれればいいのに…なんて、女性あるあるの「察してちゃん」と言われるかもしれませんが…
『川端康成が死んだ日』は、意味が分かるとゾワッとしました。
本作のなかでやはり一番好きだったのは、『オリーブの実るころ』です。独りよがりではない真実の愛について考えさせられます。良い話だったなぁ。
また時間をおいて読み直してみると、違った感想になりそうな本作。本棚に並べておきたい一冊です。
今回の本の本体表紙と裏表紙
オリーブでタイトルが囲われていてオシャレ!!
裏は猫!この猫は・・・
ジャケットを外すと、また違った装丁で可愛いですね!茶色がオリーブの樹木を思わせます。
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