【読書日記】本を愛した彼女と、彼女の本の物語/上野遊

こんにちは。

もうあっという間に10月も終わりですね。
今週末は、神保町で古本まつりが行われているようです。いつか行きたい!!
私が行きたいと思っている古本祭りは、神保町と下鴨神社内で行われるものです。
下鴨神社の古本祭りは、森見登美彦さんの本にも出てくるので、ぜひとも行ってみたいです。

今回の本

タイトルは一回読んだだけでは、理解できなくて3回ぐらい読みなおしました。(笑)

意思を持った1冊の「本」の目線で語られる物語です。装丁も素敵です!

あらすじ

書名は『ホテル・カロン』、著者は朝霧霞、定価は680円(税別)。一万二千部刷られた初版のうちの一冊がこの物語の主人公だ。

本である僕が意識を持ったのは、製本過程で大きなものから切り離された時のこと。

周りには、僕と瓜二つの兄弟たちがいるけれども呼びかけても返事は無い。そして僕は自分が一冊の本であることを自覚しており、生まれたばかりのはずなのに知識が豊富である。

新刊本として書店に並び、入荷された兄弟と合わせて3冊で新刊棚に平積みされ読んでくれる未来の持ち主を待つ。
一冊また一冊と買われていき、次はいよいよ僕の番になった。女性向けの小説なので、どんな女性が買っていくのだろうと楽しみに待っていたが、悲劇が訪れる。

なんと隣の映画化本の売れ行きが良く、追加入荷したため並べる場所を空けるために僕は店の奥の出版社別の棚に差されたのである!

返本、さらにはその行先を想像して覚えていたが、思い掛けない人が僕を買っていったのだ。

僕を買っていったのは、いかにも会社員な中年男性だった。

中年男性に買われて行きついた先にいたのは、病室のベッドでスマホを見ている女の子だった。その女の子、銀河(ぎんが)は一向に僕を手に取ることはなくスマホばかりを見つめている。そしてどうやら心臓が悪いようで手術が必要なようだが、嫌がっているということも彼女の側に未読のままでずっと置かれている僕は知っている。

しかし、ふとしたキッカケで僕を読んだ銀河は考えを変えて一歩踏み出す勇気を出す。

その後は僕を銀河が毎日のようにお守りとして持ち歩くようになった。だから僕は銀河の周りで起きていることも知っているし、無機物として周りの状況を考察することもできる。

ただし、本なので声には出せないし、何もしてあげられることはないが・・・

一冊の本をきっかけに前向きに一歩踏み出そうとする銀河とそれを誰よりも近いところで見守る本のお話です。

感想

完全に本の目線で描かれていて、最初から引き込まれてしまいました。僕が意識を持ち始めたところも印象的ですし、本ならではの恐怖(お風呂での読書による水害など!)も読んでいて面白かったです。

銀河は、これまで本を全く読まなかった女の子でしたが、僕を読んで勇気づけられ、お守りとして毎日持ち歩くようになります。私にもこれぐらい思い入れのある本がいつか出てくるといいな。

入院が原因で、新学期に出遅れ友達づくりの輪に入れず、一人で休み時間に本を読む銀河。成績が良くなく、勉強に付き合ってくれることになった睦月も読書好きで銀河の普段の様子を見て声を掛けてみたかったとのこと。そして、本の舞台になった場所へ聖地巡礼に行ったときに出会った男の子との再会。

一冊の本をきっかけにつながっていく運命。ラストは悲しいけれど、意思を持っている本である僕と銀河のつながりを感じるものでした。この本を読んだことは、きっと忘れない。すごく素敵な本でした。

最後に・・・この本に出てきた本を読んでみたい!! 主人公の『ホテル・カロン』ももちろん、創作している本がいくつか出てきます。いつか作家さんが書いてくれると信じ、待っています。

おすすめ関連書籍

本がかかわってくるお話を紹介します!

【読書日記】ここは書物平坂 黄泉の花咲く本屋さん/新井輝

【読書日記】スガリさんの感想文はいつだって斜め上/平田駒

【読書日記】幻想古書店で珈琲を/蒼月海里

【読書日記】熱帯/森見登美彦

【読書日記】書店ガール/碧野圭

にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ
にほんブログ村

スポンサーリンク
記事用

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

関連コンテンツ



スポンサーリンク
記事用