今回の本
初めて読む作家さんですが、本屋でどうしてもタイトルに惹きつけられてしまい、買わずにはいられませんでした。
帯の『ドイツでバリキャリ』も気になります!!!
あらすじ
物語の神が支配する世界。
物語の神の役割は人間を『正しい物語』の中で生きさせること。
『正しい物語』とは、男が中心に存在するもの。
女性が王座に据えられた弥生時代は、その巫女を男に暗殺させて王国ごと所在不明にして修正した。
何百年の時が流れ、物語に閉じ込められた女性たちは自覚もなく、定義された『正しさ』の中で生きていた。
物語の神は帝の結婚という物語に取り掛かっていた。
神は性質の異なる5人の姫を物語に配置した。女の模範と女を戒めるための設定がされた姫たちだ。
姫たちは帝に与えられた課題に取り組んでいた。
現実には存在しない仏の御石の鉢や火鼠の皮衣などを題材にして、琴と和歌で表現するというものだった。
”気弱な姫”、”自信家の姫”、”禁欲的な姫”、”裕福な姫”、そして”怠惰な姫”の物語の中では名を持たない5人の姫がそれぞれ取った方法とは・・・
そして、物語の神の存在に姫が気付いた時に取った行動とは・・・?
次々と物語の中に転生して物語の神に抗う姫たちの戦いは必見!!
感想
なかなかボリュームのある作品で読後は、幾つもの本を読んだような満足感がありました。
蟹工船と舞姫は未読でしたが、これを機に読んでみたいと思いました。
徹底して女性を物語に出てくる脇役、名すらいらない(〇〇の姫)として男性主体の物語を作ろうとする物語の神。
思い返せば、源氏物語も平家物語も竹取物語も男性主体の物語で女性は華を添え、物語を盛り上げるために描かれることが多いですよね。
その時のかぐや姫・末摘花・静御前たちの想いや苦しみを女性目線では書かれていません。
本作は、それぞれのキーとなる人物に“ごう”と“さよ”が憑依していき物語を女性が悲劇で終わらないように変えようとしていきます。
「もしかして、あの作品の人物はこういう想いだったのかな?」と2人の想いと行動を読んで想像したり、作品が男女逆転したりもするので全く新しいものを読んでいるようで二度楽しめました。
時代が進むにつれて、神が2人に課す試練がどんどん難しく厳しくなっていきますが、過去の時代の出来事がリンクしてきていて読むごとに深みを増します。
パロディ作品となるのでしょうが、男女平等について各時代の歴史と共に学んでいけたような気もします。
そして現代。名もなき家事や男性育休など色々と課題のある時代ですが、また数十年後には新しい価値観に変わっているのでしょうね。
今回の本の本体表紙と裏表紙
絵巻物風で素敵ですね!!あれ?でもどうして女の子が2人いるのでしょうか?
その秘密は本編で確かめてくださいね!
討ち入りの格好をしているのは・・・・女性ですね!!
ジャケットを外すとまだ文字の描かれていない絵巻物。
扇子に矢が刺さっているのは平家物語のあのシーンですね!
おすすめ関連書籍
名作を元にした新しい物語を紹介します!
【読書日記】むかしむかしあるところに、死体がありました。/青柳碧人