【読書日記】八月の銀の雪/伊与原新

今回の本

本屋大賞にノミネートされていたので、気になっていました!

そして、伊与原さんの本は現在読み途中のもので『月まで三キロ』を持っているのですが、こちらも理系な内容を分かりやすく書いているので本作もそうなのかなと思い購入しました。

あらすじ

大学を1年休学して周りには1年遅れた状態で就活を始めた僕は、人前で話すことが苦手だ。

しかし就活では、それを回避することはできない。面接ではうまく言葉が出ず、みんなに何だこいつと思われているんじゃないかと思うと更に言葉は出てこない。負のフィードバックに陥っていた。

面接でボロボロになった後、研究室で先輩の手伝いで呼び出されて疲れた状態で、いつものコンビニに寄った。

外国人アルバイトの女の人は、今日も接客にもたついている。

ほかに店員がいないため、僕も彼女がレジをする列へと向かったが案の定もたついていた。心の中でもう彼女の列に並ばないと毒づきながら出入り口へ向かおうとしたとき声をかけられた。

イートインスペースでスマホをいじっていた若い男だった。

彼とは同じゼミで班分けのときに一人あぶれていた僕に声をかけてくれた人だった。

話をしていると彼は社会人一年目になっており、仕事の話をされ手伝ってくれないかと話を持ち出された。

その仕事というのは、仮想通貨のアフィリエーターとして顧客に説明する彼に付き添い、自分もやっていると話を合わせることだった。

一度目の付き添いを終え、報酬を受け取ったが惨めな気持ちでいつものコンビニに入る。

すると、例の外国人アルバイトの女の人に論文をみなかったかと聞かれた。

その論文は彼女の大事な論文だという。

そういえば、アフィリエーターの彼と話をしたときに使ったメモの裏を見ると英文だった。

彼女に持っていたメモ分の論文を渡すと彼女自身のことについて話をされた。

話をしていると地震の研究をしている優秀な奨学生だった。

彼女と話をしているうちに僕は先入観で彼女を見下していたことに気づき始め・・・・・

上記の表題作『八月の銀の雪』の他に4編の短編があります。

・海へ還る日

・アルノーと檸檬

・玻璃を拾う

・十万年の西風

感想

最後まで読み終えて、改めて驚いたのが参考文献の多さ。

中には英語の論文も複数。

読んでいて、これは勉強になるなぁと思うことが多々あり調べるのは大変だっただろうなと感じていました。

きちんと調査されて書かれたものだからこそ、1つ1つのエピソードに厚みがものすごくあります。

1つの物語を読んでいるというより、主人公と共に勉強している気にもなる。不思議な読書感覚です。

特に表題でもある、八月の銀の雪が印象深いです。

外国人コンビニ店員が話す自身の研究テーマである地球のコアを調査する理由。

『みんな、なんで自分たちの住む星の中のこと、知りたくならないのか。内側がどうなっているか、気にならないのか。表面だけ見てても、何もわからないのに。』

深い。

私も大学院時代は研究テーマを持って実験していたから気持ちがわかります。

でもこれって研究テーマに限らず、色んなことに当てはまるんですよね。

表面じゃなくて、もっと深いところまで見ないと、意識しないと本当のことは見えてこない。

心に残る一文です。

各章は読了後に爽快感を与えるものではないけれど、本当にじんわりと効いてきます。

たぶん、温かい気持ちだけではなく少し苦い気持ちにもなるかもしれません。

でも今まで知らなかった世界を知ることのできる一冊でした。

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