【読書日記】六人の嘘つきな大学生/浅倉秋成

今回の本

王様のブランチで紹介されており、さらには2022年本屋大賞を受賞した本作はどこかで目にしたことがあるのではないでしょうか?

就活を題材にした本です。

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あらすじ

舞台は2011年。

2009年にスピラという名のSNSがリリースされ、爆発的な速度で若者たちの心をつかんでいた。

そのスピラを運営する株式会社スピラリンクスが今年新卒総合職の採用を開始した。

さらには採用枠は『若干名』だったが、初任給が破格の五十万円。

多くの学生が飛びつき、応募総数は五千人を超えていたが最終選考まで残ったのは6人。

この6人に課せられたのは、グループディスカッションだった。

最終選考としてのグループディスカッションであり、ディスカッションの出来によっては6人全員に内定を出す可能性もあるという。

本番は1か月後であり、それまでに最高のチームを作り上げチームディスカッションをしてほしいと人事の人は言った。

早速、6人の大学生は1か月の間に週に2回集まって何を議題にされても対応できるように対策を練って万全の体制を作っていく。

何度も顔を合わせることにより、それぞれに役割がついて信頼関係も築いていたはずだった。

本番前に最後の打ち合わせと称した飲み会をした帰りに人事からメールが来るまでは。

そのメールには最終選考の方針が変更になり、採用枠は1人になるという。さらには議題が『六人の中で誰が最も内定に相応しいか』であり、議論の中で選出された1人に内定を出すとのことだった。

最終選考が始まり、いざ議論を始めようとしたところで扉付近に見覚えのない白い封筒があるのが目に入った。

誰のものでもないようだが、封筒の中に手を伸ばすと6人それぞれへの宛名が印刷された小さな封筒が入っていた。

各自へ配り、1人が封筒の中身を開けると・・・・そこにはメンバーのうちの1人のゴシップ記事だった。

この封筒の存在により『六人の中で誰が最も内定に相応しいか』の議論が思いもよらない方向へ流れていく・・・・

感想

当初はチームディスカッションとして、チーム全員で良い議論をして内定をつかみ取ろうと週に2回集まって親睦とともに信頼関係を築いてきた六人。

それが最後の集まりである飲み会を終えて帰路につく際に届いた一通のメールで全てがひっくり返ります。

ディスカッションで内定に相応しい1人を選ぶこと。その人が内定を勝ち取ることができる。

当初の内定をとる人数を決めておらず、場合によっては最終選考に残った六人全員に内定を出すと言っていたのに、新たな方針では内定者は1人。

1か月間、築き上げてきた仲間意識の高かった関係が一気にライバル関係に変化する様子は、静かながらも今後の不吉な予感を思わせるものでした。

洞察力が自慢でも真実を見極めることは本当に難しいですよね。

最初のインタビューだけでは、この大学生たちは皆どうしようもないやつらだなと思っていましたが、読者はあることを知り、これまでの情報が一変し目の前に違った世界が見えるようになります。

真実を知ったところで終わりではないところが本書の魅力かと思います。

真実を知り、あの頃の自分の浅はかさを顧みて現在の自分の殻を破るところまで描かれており読み終えた後にふと周りを見渡したくなりました。

ぜひ実際に読んで体験して頂きたい本です。

今回の本の本体表紙と裏表紙

登場人物である6人の大学生が描かれています。就活スーツを着ていますね。

珍しいことにこういった人物画の場合はジャケットを外すと別のデザインが本体に描かれていることが多いのですが、本書はジャケットを外しても絵が描かれていました!

読み終えた後に見たから思うのですが、何かメッセージ性を感じますね。ジャケットの表と裏・・・的な。

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