【読書日記】その扉をたたく音/瀬尾まいこ

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今回の本

発売と同時に購入し、積読してほぼ1年経ってからふと「心が温かくなるやつ読みたい!」と思い引っ張り出したこちらの本。

私的には、心温まる系の本では瀬尾まいこさん・青山美智子さん・西條奈加さんの書かれた本は間違いないと思っています!!

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あらすじ

高校のときに周りに流されて始めたギターだったが、文化祭でバンドを組んでそれに打ち込んだ日々が忘れられずにミュージシャンを目指す29歳の宮路。

30歳になるまではと定職に就かず、平日は作曲などに勤しむが音楽で稼ぐことは出来ないでいた。

それでも実家が裕福なため、毎月送られてくる仕送りで生活できており働く必要性を感じなくなってきていた。

演奏する場は、老人ホームや病院でギターの弾き語り。

高校時代のバンドメンバーはとっくに社会人になり、家庭をもっている人もいた。もちろんミュージシャンになった人はいない。

今回も老人ホーム そよかぜ荘で演奏することになったが、場が盛り上がらず持ち時間を余してしまった。

余った時間に老人たちのリクエストでホームの介護士 渡部がサックスを演奏した。

曲は故郷。鑑賞していた老人たちが涙ぐみながら思い思いのテンポ・音程で歌いだす。

渡部のサックスを聞いて、宮路は心が震えた。渡部は天才だと思った。

もう一度サックスを聞きたくて、バンドを組みたくて宮路は次の金曜日もホームに訪れる。

その週はホーム利用者の手品だった。時間が余り、再びサックス演奏を聴くことができ宮路は感極まって立ち上がって歌ってしまった。

最前列に座っていたので、もちろん後ろの席の人の邪魔になり、後ろに座っていたおばあさんに杖で頭付近を叩かれてしまった。

叩いた頭の様子が心配だから次の週もホームにおいでとおばあさんに言われて、宮路は助かった。演奏予定のない宮路がホームに毎週入り込むのは大変だからだ。

そのおばあさんは水木静江といい、次からは受付で『水木の息子』と書くように言った。

水木のばあさんは宮路のことを『ぼんくら』と呼び、することがないんだからと宮路に買い物を頼むようになった。

金曜日は頼まれた買い物を届けにホームへ行き、渡部にサックスを演奏してくれと交渉する日々を送るようになった。

買い物を頼まれるうちに水木のばあさん以外の利用者とも親しくなっていくが、そこは老人ホーム。ある日思いもよらない出来事が起きる・・・

感想

舞台が老人介護施設ということもあり、きっと何らかの別れはあるんだろうなと覚悟して読んでいましたが・・・・

それでもラストは泣ける・・・

水木おばあちゃん、最初から思っていたけど想像以上に観察力が鋭くて、良い人だなぁ。

家がお金持ちでミュージシャンの夢をずっと追いかけることができるけど、実家からの仕送りが十分もらえるから働く必要もなくて、もうすぐ30歳になるけれど高校時代にバンドをやったメンバーはとっくに社会人になり家庭をもっていたりと差ができてしまったことにまだ本当の焦りを感じていない主人公。

本文中には、この人は「純粋なんだなぁ」と思うセリフが多々あります。

私はデイケアサービスで介護実習を経験したことがあるのですが、文中に出てくる日中の穏やかな歓談している風景を実体験とともに思い出すことができました。

ちょっと耳の遠い方もいるので、聞こえる方の耳側に立って大きく声を出すけれど決して叫ぶような怒鳴っているように聞こえないように注意しながら話をするのも実習先で学びました。

一見、何も考えずにふらふらしているように見える主人公ですが、お年寄りから頼まれた買い物一つに対してもかなり心を砕いていることが伺え、この才能を別なことに使えばよいのに・・・と考えながら読んでいました。

水木おばあちゃんが宝物にしていたものが分かるくだりでは、じわっと涙が出そうになりましたが、宝物に対して主人公が思ったことについては胸が締め付けられました。

主人公の決意に読んでいるこちらも「あぁ、この人はもう大丈夫だな」と安心することができます。

最初に演奏後にもらったお年寄りからの贈り物と次に演奏した後にもらう贈り物の扱いの差からも主人公の成長が見受けられますね!

恋愛要素が全くない本は珍しいですが、恋愛なしでもここまで心を揺さぶられることがあるのだなと感じた一冊でした。

今回の本の本体表紙と裏表紙

下の方に黄色で連なる家が見えます。空に浮かぶ黄色のひし形は星なのでしょうか。とすると夜もしくは曇天の空なのかもしれませんね。裏表紙では雲の割れ目から光が降り注いでいるように見えます。

本体は、青一色の中に上下に並ぶドット。時々ぴょこんとずれているのが可愛らしいですね!

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