【読書日記】小説の惑星 ノーザンブルーベリー篇/伊坂幸太郎編

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今回の本

たむらしげるさんのイラストが目を引くこちらの本。

新刊発売予定から知り、たむらしげるさんのイラストが大好きなので予約していました!

今回はノーザンブルーベリー篇ですが、オーシャンラズベリー篇もありますので合わせて読みたいですね!!

あらすじ

伊坂幸太郎さんが厳選した大好きな小説や詩を集めた作品です。

「小説っていくつか読んだけど面白いと思えなかった」など小説に対して見限ろうとしている人へ伊坂幸太郎さんが渡したい作品とのことです。

ノーザンブルーベリー篇では、眉村卓・井伏鱒二・谷川俊太郎・町田康・泡坂妻夫・佐藤哲也・芥川龍之介・一條次郎・古井由吉・宮部みゆき さんの短編や詩が載っています。

いくつかあらすじを紹介します。

眉村卓 『賭けの天才』

同じ会社の営業部の同僚Fは、ぼくにはとても及ばない成績をあげていた。

いったい何故そんなに注文を取れるのか。

Fは「計算だよ、計算」と言う。

しかしFは営業成績だけでなく、あらゆる賭けに勝ち続けている。

野球の勝ち負けや社長が病気になって何月までに死ぬかまで。

ぼくはFに「きみは、実は未来が読めるんだろう?」と問い詰めた・・・・

芥川龍之介『杜子春』

唐の都 洛陽の西の門の下。

元は金持ちの息子だった若い男が財産を使い果たして暮らしに困り、ぼんやり空を見ていた。

すると1人の老人が現れ、若者に言葉を「お前は何を考えているのだ。」と声をかけてきた。

今夜の寝る場所もないので、どうしたものかと考えていたと答える。

すると老人は、夕日の中に立って影の頭の部分にあたるところを夜中に掘ると車いっぱいの黄金が埋まっていると教えてくれた。

杜子春は一日で都一の大金持ちになり贅沢な暮らしをし始めたが、やがてまた財産を使い果たして門の下にいた。

再び老人が現れて、黄金のありかを教えてくれる・・・・

一條次郎『ヘルメット・オブ・アイアン』

夕方にタクシーに乗り込み、ラクヨーまで向かう。

男は人間らしい暮らしをしたいと思い、杜子春のやり口を真似ようと思っていた。

門の壁に背をもたせて夕空を見上げていた。

すると老人が現れた。

「お前は何を考えているのだ。」

老人との問答を続けていると、老人の名前を知った。

マウント・ガビに棲んでいる鉄冠子、通称ヘルメット・オブ・アイアンだと言う。

金持ちになって貧乏になる一連の流れは、VRで手間と予算がかかると裏の話も教えてくれた。

男は杜子春のように老人についてマウント・ガビへ向かい仙人になるための試練を受けるが・・・・

感想

私が思う1番の見どころは、芥川龍之介の杜子春とその後に続く一條次郎のヘルメット・オブ・アイアンでした。

杜子春は、あまりにも有名ですがきちんと読んだことがなかったかもしれません。

今昔物語や宇治拾遺物語などでよく見る日本の昔話のような始まり方ですが、その展開は途中過激になり、最後はホッと一息つくような終わり方をしています。

…が、どこまでが仙人 鉄冠子が見せた幻惑なのでしょうか。

どこからが幻惑で現実なのかを考察してみると、面白いですね。

そして次に続くヘルメット・オブ・アイアンは、最初に目次を見ただけでは杜子春と繋がりがあるようには思っていませんでしたが。まさかの鉄冠子を表していたとは!

杜子春を感慨深く読み終えて、次のページをめくると杜子春のやり口を真似て良い暮らしを手に入れたいと試みる様子を見て、笑ってしまいました。

しかも現代的になっており、地獄の責め苦はVR!!

映画化の話や杜子春の兄弟 杜子秋まで出てくる始末!!

どう展開していくのかと思っていたら、最後はまさかのオチで伏線回収されており、またしみじみする終わり方…

どちらかと言うと、杜子春よりヘルメット・オブ・アイアンの方が物悲しい感じがしました。

現代に近くなったからでしょうかね。

上記のあらすじでは紹介していませんが、宮部みゆきさんの『サボテンの花』もすごく良かったです!

短編ですが、心にじんわりと温かく残るので本作のラストを飾るのに相応しい話でした。

表紙につられて購入した本作でしたが、『杜子春』『ヘルメット・オブ・アイアン』『サボテンの花』が特に私にとっては読んでよかったと思えるものでしたので、二度お得感がありました!

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