【読書日記】密室黄金時代の殺人 雪の館と六つのトリック/鴨崎暖炉

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今回の本

2022年第20回 『このミステリーがすごい!』大賞文庫グランプリ受賞作です! 密室尽くしの謎を密室のスペシャリストが鮮やかに解決 と帯に記載があり、さっそく購入してみました!

あらすじ

日本で初めて密室殺人が起きたのは3年前。

犯人はすぐに捕まったが、密室の謎がどうしても解けなかった。完璧な密室だった。

その裁判の中で密室の謎が解けなければ現場の不在証明と同等の価値があるとして、無罪判決となった。

つまり完璧な密室であり、誰も謎が解けなければ無罪になるということが公に宣言されたようなものだ。

それからは、密室殺人が急激に多くなった。1年に起きる殺人事件の3割が密室殺人になるほどに。

葛白香澄は、年上の幼馴染 夜月のイエティ探しに付き合って埼玉の雪白館というホテルを訪れることになった。

この雪白館は一週間以上の滞在をする客しか泊まれないホテルだったが、葛白にとって魅力的だったのは埼玉イエティ探しではなかった。

かつて雪城白夜という本格ものの推理作家が所有しており、その館で密室殺人のゲームを行ったのだ。

もちろん実際に誰かが殺されたわけではなく人形にナイフが刺されていたのだが、その時に招待されていた作家や編集者の誰もがその密室の謎を解くことができなかった。

雪白館は今は他の人の手に渡りホテルに改装されているが、現場になった部屋だけは当時のままに保存されているという。

葛白は推理小説が大好きだったため、この誘いに乗ったのだった。

その日からホテルに宿泊する面々は、医師・探偵・会社社長・国民的女優とそのマネージャー・イギリス人の美少女・葛白の中学の訳あり同級生・とある教団の司祭だった。

そして翌日、司祭が何者かに殺害されていた。

部屋は密室であり、雪城白夜が作り上げ未だトリックが解かれていないあのゲームの現場と同じ。現場にトランプが残されていること以外は模倣だった。

ホテルと市街をつなぐ橋も落とされており、電話も繋がらない。

この日から密室殺人が次々と起こる・・・

感想

雪山で唯一の交通路である橋が落とされた いわゆるクローズドサークルで次々と密室殺人が起きていくのですが、本作の魅力はメインである密室に対する推理の他に登場人物がそれぞれキャラが立っていることではないでしょうか。

雪白館を有名にしたミステリー作家の謎を見たいがために夜月に付き合って訪れた葛白香澄。

イエティを探すためにホテル雪白館を訪れた夜月。

中学時代の同級生で葛白と同じ、文芸部でありミステリーや密室にハマっていた蜜村漆璃。

この三人がメインといって良いでしょうが、夜月が他の登場人物を覚えやすいように読者をアシストしてくれます。

例えば、ホテルの支配人 詩葉井玲子のことは『支配人のシハイさんか』、宿泊客の医者 石川のことは『医師のイシカワさんね』などなどナイスなアシストをしてくれます。

そのおかげで、次々と起きる殺人でも「あれ?この人誰だっけ?」という疑問を解消するためにページを戻すことは一回もありませんでした!!一回も!!これって凄いことだと思います。

このコンビは今後も続いていくのでしょうか。

それならば夜月のアシストは今後も続いていってほしいものです。

密室のトリックって、小説で読むと結構理解するのが難しくなんとなくで流し読みしてしまうのですが、本作はしっかり理解させてくれました。

そして、現場に残されるトランプの意味にも驚かされました。

蜜村の鮮やかな推理と所々で入る主人公 葛白のツッコミがなんともテンポが良く、ミステリー小説なのに肩ひじ張らずに読むことができました。

このミス大賞も納得の内容で、とても濃いミステリー小説でした。

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